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地球環境と塗装

地球に優しい粉体塗装(パウダーコーティング)-
私たちの生活環境はさまざまな色に囲まれており、色を演出する塗装は日常生活に必要不可欠なものとなっています。人々の心を和ませる「色」を付けるのが塗装の一番の目的ですが、その他に錆の発生や腐食を防ぐのも塗装の大切な役割です。しかし一方で従来型の塗装が地球環境に大きな負荷を与え続けてきたのも事実です。
今日、環境問題が盛んに取り上げられる様になってきている状況で、塗装の目的を損なう事なく、地球環境や人体に優しい方法を真剣に考える必要があります。

1. VOC

VOCとは英語のVolatile Organic Compounds = 揮発性有機物質の事で、シンナーや溶剤型の塗料に含まれるトルエンやキシレン等の化学物質の事です。このVOCは、オゾン層の破壊、光化学スモッグの発生原因、近年問題になっているアレルギー症の一種であるアトピーやシックハウス症候群の原因の一つと言われています。一方で、現在までの塗装の主流は溶剤型で、溶剤型の塗料は塗装時にVOCを大気中に排出する事から地球環境への負荷や人体への影響はかなり以前から指摘されていました。

2. VOC排出規制

欧米では数十年前よりVOCの地球環境と人体に対する害が認識され、VOCの排出を削減する為の規制や自主努力が早くから取られてきました。最初の規制は1966年にアメリカのカリフォルニア州で制定された「ロスアンジェルス66」で、主として光化学スモッグの発生原因となる有機溶剤の規制が行われました。以降、欧米のほとんどの工業先進国で何らかのVOC規制が行われ、その規制は今後も厳しくなってゆくものと考えられています。
日本では2001年4月よりPRTR法が施行され、特定化学物質の使用量の届出義務が全ての製造業に課せられ
る事になりました。PRTR法で指定されている化学物質は発ガン性物質のダイオキシンを始め、人体や地球環境に有害とされている約380種類となっていますが、この中にはトルエン、キシレン等、従来型の塗装に使用されている多くの揮発性有機物質が含まれています。
PRTR法は使用量の届出を義務付けたもので、使用量や排出量を規制するものではありませんが、今後何らかのVOCの排出量規制が行われると考えるのが妥当と思われます。

ちなみに環境対策の先進国であるドイツのVOC排出量は、各種の規制と業界の自主努力により表に示されるように大幅に削減されています。

3. VOC排出量削減の具体的な方法

塗料業界ではVOC排出量の削減のために、下記の4種類の具体策が取られています。

(1) 溶剤型塗料から水性塗料*1への移行
(2) 溶剤型塗料からハイソリッド塗料*2への移行
(3) 溶剤処理施設の使用
(4) 溶剤型塗料から粉体塗料への移行

*1 水性塗料= 水で希釈可能な塗料の総称で、エマルジョンタイプ、ディスパーションタイプ、水溶液タイプ、スラリータイプ等がある。但し、
タイプによっては有機溶剤を1〜40%程度含む。
*2 ハイソリッド塗料= 塗装時の固形分が従来の塗料に比べ15〜25%程度高くなっている塗料。

上記の方法のうち(1)と(2)の塗料は、従来の溶剤型塗料に比べると使用されている有機溶剤ははるかに少量ですみますが、VOCの排出がゼロになるわけではありません。又、(3)の溶剤処理設備は設備自体の費用が高い上、ランニングコストもかなり割高となるため、どうしても溶剤型塗料を使用せざるを得ない場合にのみ用いられている方法です。

欧米で最も注目されているVOC排出量削減策は(4)の粉体塗料への移行であり、粉体塗料の使用量は年々増加を続けています。粉体塗料は100%固形分の塗料で、VOCの排出量はゼロ、若しくはほとんどありません。日本でも粉体塗装は環境型塗料として注目されていますが、最近の10年間の使用量はほとんど変わっておらず、工業用塗料全体に占める粉体塗料の割合はいまだに1%程度にしかすぎません。

4. 粉体塗装の歴史

粉体塗装は1950年頃に流動浸漬法が紹介され、主に防錆塗料として使用されてきました。流動浸漬法は容器の底に設置した多孔板の上に粉体塗料を入れ、多孔板の下から適度の圧縮エアーを送る事により塗料が舞い上がって安定した流動層を形成したところに、高温で予熱した被塗物を浸漬する方法で、一回の塗装で数百ミクロンの厚膜が得られる点が防錆に重用されたわけですが、一方で、「美粧」塗装としてはほとんど使用される事はありませんでした。
「美粧」用として粉体塗装が使用されるようになったのは、1962年にフランスのサメス社が静電スプレー方式の塗装機を開発した以降です。静電スプレー方式の粉体塗装には、熱硬化性の塗料が使用され、従来の流動浸漬法
(熱可塑性塗料)では得られなかった塗膜性能が付加されることとなりました。
粉体塗装が急速に普及したのは1970年からで、世界的には、環境問題に敏感なヨーロッパが先駆者となり、次いで1980年代にアメリカ、アジア諸国に広まりました。近年では粉体塗装も薄膜化や金属以外の製品への応用などその可能性が日ごとに広がっています。

5. 高耐候性粉体塗料

粉体塗料の原料として主に使用されている樹脂は、エポキシ、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン等があり、使用目的により使い分けられています。例えば、エポキシ樹脂は耐食性や耐薬品性に優れていますが、耐候性は無くすぐにチョーキングを起こしてしまう事から、エポキシ及びエポキシとポリエステルのハイブリッド塗料は、埋設鋼管の防錆塗料や、洗剤等が使用される屋内用塗料として使用されています。
一方で、ポリエステルやアクリル樹脂は、エポキシ樹脂に比べ耐候性に優れるために、屋外用塗料として使用されています。然しながら、一般的なポリエステル樹脂粉体塗料の耐候性はまだ、建材に使用できるレベルではありません。又、アクリル樹脂の粉体塗料は、耐候性は十分と言えますが塗装ラインで他の樹脂系の塗料に悪影響を及ぼす事から、アクリル専用の塗装ライン以外では実用的ではありません。
一般に「高耐候性塗料」とは、フロリダ暴露試験の3〜5年に耐え得る塗料の事で、欧米ではAAMA、Qualicoat、GSB等の規格が一般的に使われています。

日本ではアルミ建材の着色には主にアルマイトが使用されていますが、アルマイトは色数が少なく、ロットごとの色ブレが大きいため、欧米では塗装が広く使用されています。数年前までは、耐候性の問題から、溶剤系のフッ化ビニリデン(PVDF)がアルマイトと併用されてきましたが、近年では高耐候性の粉体塗料が広く使用されるようになりました。これはまさに塗装の目的を損なう事無く、地球環境と人体に優しい方法を採用した成功例と言えます。
ヨーロッパでは、既に数年前から高耐候性粉体塗料が広く使用されており、高耐候性粉体塗料の主流は特殊なポリエステル樹脂系で、アクリル樹脂の粉体塗料は際立った透明度とレベリングが要求されるクリアコート等の特殊用途に限定されています。

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